所蔵品のご紹介

芭蕉筆「ふる池や」句短冊 (色違打曇)

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(伊丹市指定文化財)

 この句は、芭蕉開眼の句として古来有名なため、偽筆も多いが、本点は稀にみる真蹟。句は、貞享三年(一六八六)刊行の『蛙合』に発表された。伝統的な和歌の優美な世界では、清流に配し「鳴く蛙」が定着していたが、芭蕉は蛙を古池に配し、「飛ぶ蛙」の水音をとらえた。そこに俳諧の新しい手柄がある。

 本点は、温雅悠揚たる筆致で、落款「はせを」や「婦」「や」「込」に貞享後期の特色がよく出ており、伝存する「ふる池」短冊中の白眉とされる。著書『芭蕉の筆蹟』で岡田利兵衞(柿衞)は芭蕉筆蹟学の礎を築いたが、本点はその代表的資料といえる。



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