展覧会のご案内

秋季特別展「西鶴―上方が生んだことばの魔術師」【終了しました】

「西鶴十二ヵ月(八月).JPG

(「天下矢数二度の大願四千句也」。この句を発句として、西鶴は一人で一昼夜に四千句を詠みあげるという大記録を成し遂げます。数千人の聴衆を集めたというこの一大イベントは、『西鶴大矢数』として延宝九年(1681)に刊行され、息つぐ間もなく放たれる弓矢のように言葉を自由自在にあやつった西鶴の存在を日本中に知らしめました。今年は『西鶴大矢数』が刊行されて330年になります。『西鶴大矢数』はもちろん、二万句達成を示す新出の西鶴真蹟短冊や、西吟の記した奉納額、またエネルギッシュな矢数俳諧とはうって変わって典雅な西鶴の絵画と句が織りなす「西鶴自画賛十二ヵ月」など貴重な資料を紹介しながら、「浪花の浮世草子作家」として有名な西鶴の、「俳諧師」としてのことばへの挑戦をご紹介します。)


 「天下矢数二度の大願四千句也」。この句を発句として、西鶴は一人で一昼夜に四千句を詠みあげるという大記録を成し遂げます。数千人の聴衆を集めたというこの一大イベントは、『西鶴大矢数』として延宝九年(1681)に刊行され、息つぐまもなく放たれる弓矢のように言葉を自由自在にあやつった西鶴の存在を日本中に知らしめます。全国各地で現れる矢数俳諧の記録への挑戦者からの挑戦を受け、ついに西鶴は貞享元年(1684)、一日に二万三千五百句を独吟するという、他の追随を許さぬ、空前絶後の試みをやってのけたのです。「神力誠を以て息の根とむる大矢数」とみずから詠んだように、まさに、神がかり的な力によって、西鶴は矢数俳諧の記録にとどめを刺したのです。

 人間わざとは思えぬ偉業をなしとげた西鶴は、実は、伊丹ともゆかりが深い人物です。京の俳人宗旦が伊丹に開いた俳諧塾也雲軒(やうんけん)をしばしば訪れたという記録が西鶴の追善集『こころ葉』にあります。ここでの若き鬼貫や鴻池の西六(さいろく)をはじめとする伊丹の酒造家の旦那衆たちとの交流がのちに、西鶴の浮世草子『西鶴織留(おりどめ)』につながります。『西鶴織留』で西鶴は、「津の国のかくれ里」として伊丹を紹介し、諸芸に通じた伊丹の酒造家の男たちを描き出しているのです。

 そして、伊丹市に近い豊中市では、昨年、原田神社に奉納された俳諧額が市の文化財に指定されました。幅約3メートル60センチもあるこの大きな額は、西鶴の浮世草子の代表作『好色一大男』の版下を書いた西吟(さいぎん)が元禄十六年(1703)に、近郊の農村地域の人々から寄せられた句のなかから撰んだ百句を書いたもので、今もその筆蹟を墨痕あざやかに見ることができる貴重なものです。

 伊丹の酒造家をはじめ農民庶民にいたるまで俳諧を楽しんだ時代のエネルギーを感じ取っていただければ幸いです。



会期

  • 平成23年9月10日(土)~10月23日(日)
  • 月曜日休館。ただし、9/19(月)・10/10(月)開館、9/20(火)・10/11(火)休館。
  • 開 館 時 間  午前10時〜午後6時(ただし入館は5時30分まで)

主な出品作品

  • ・『西鶴大矢数』(天理大学附属天理図書館蔵)
  • ・西鶴筆「神力誠を以」句短冊《新出》(個人蔵)
  • ・『西鶴織留』(柿衞文庫蔵)
  • ・『西鶴五百韻』(国立国会図書館蔵)
  • ・『こころ葉』(東京大学総合図書館蔵)
  • ・西吟撰原田神社奉納俳諧額《豊中市指定文化財》((宗)原田神社蔵)
  • ・西鶴自画賛十二ヵ月《伊丹市指定文化財》(柿衞文庫蔵)  
  •                      など約80点(※会期中、展示替あり)

入館料

  • 一般700(600)円
  • 大高生450(350)円
  • 中小生350(250)円

※()内は20名以上の団体割引料金


記念講演会

  • 「矢数俳諧への道ー西鶴とメディア」
  • 早稲田大学教授 中嶋隆氏
    9月10日(土) 午後1時30分~3時

聴講は無料です。
事前に柿衞文庫にお申込ください(電話可)»


シンポジウム ※協力:西鶴研究会

  • 「ことばの魔術師ー西鶴の俳諧と浮世草子」
  • コーディネーター 青山学院大学教授 篠原進氏
    9月10日(土) 午後3時30分~5時30分

聴講は無料です。
事前に柿衞文庫にお申込ください(電話可)»


展覧会関連講座

  • 「西鶴の連句と連想」
  • 連句人(レンキスト)・俳人  浅沼璞氏
    9月24日(土) 午後1時30分~3時

  • 「西鶴と伊丹・北摂地域の俳諧」 
  • 関西学院大学教授  森田雅也氏
    10月15日(土) 午後1時30分~3時

いずれの講座も、事前に柿衞文庫にお申込ください(電話可)»

<講座料>
各回/一般1,500円 、大高生1,000円、友の会会員500円(要申込)


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